回数券を導入することは、売上を大きくするためにも、お客さんのリピート促進のためにもとても有効です。
個人事業の小規模サロンや整体院において、回数券を導入することは必須ともいえます。
当然、支払金額が大きくなるのでクレジットカードの使うケースが多くなりますが、そこに待ち構えているのが、『5万円以上の回数券はクレジットカード支払いNG』という制約です。
実際、Squareなどの決済システムの規約にも、『5万円以上の回数券はNG』というような事が書かれています。
だけど、5万円以上の回数券の支払いにクレジットカード支払いを使ってOKなケースもあれば、NGだと警告や確認メールが来ることもあります。
この記事では『5万円以上の回数券はクレジットカード支払いNG』の根拠と理由、そして対処法について解説していきます。
回数券のタイプと金額
回数券には大きく分けて2つのタイプがあります。
回数券のタイプ1|割り引き
1つは5回・10回など、ある程度まとめた回数をの支払総額を割りびくタイプ。
例えば、1回1万円の施術を10回分まとめると、10万円になりますが、そこから10%割引して9万円の回数券を販売するのがこのタイプです。
回数券のタイプ2|おまけつき
もう1つは、5回・10回などの金額で1回おまけが付くタイプ。
例えば、1回1万円の施術10回分の金額で、11回受けられるという回数券は、こちらのタイプになります。
どちらのタイプがオススメかと言うと、タイプ2のおまけ付きです。
なぜなら、タイプ1の割り引きタイプの回数券は支払総額が減るので、顧客単価が低くなってしまうからです。
10回分9万円と11回分10万円では、1万円の違いですが、1年間の回数券販売枚数が100枚だとしたら、それだけで100万円も売上が違ってきます。
かなり大きいですよね。
また、人は割引してもらうよりも、おまけを付けてもらうほうがお得感を感じます。
その意味でも、「割り引きタイプ」よりも「おまけ付きタイプ」をおすすめします。喫茶店などのコーヒー券も、このタイプが多いですね。
しかし『1回おまけ』にする場合、5回程度の回数が少ない回数券で1回おまけを付けてしまうと割引率が大きくなり、これまた客単価を押し下げる事になってしまいます。
どれぐらいの回数がいいのかは、提供しているサービスや施術の内容、金額によって異なるので、これがベスト!ということはできません。
でも、回数券を導入する際は安易に回数と金額を決めるのではなく、割引率が大きくなりすぎないよう、客単価が下がりすぎないように計算するようにしてください。
回数券の販売にクレジットカード決済は必須
いずれのタイプの回数券を導入し、金額をいくらに設定するにしても、共通することがあります。
それは、通常の施術料金と比べて、その場で支払う金額がお大きくなるということです。
上の例で出したような回数券の場合、支払金額が10万円を超すこともあります。
実際、僕が経営していた整体院では、1番金額が高い回数券の値段は13万6000円でした。
整体施術の回数券ではなく、体幹トレーニングの半年コースだと26万円、1年間のコースだと48万円で販売していました。
過去に回数券を買ったことのあるお客さんが、回数券の更新をするならまだしも、始めてきたお客さんに回数券をおすすめする時に、現金で10万円も20万円も持ち歩いているなんて、めったに無いですよね。
おそらく5万円でも、日常的に持ち歩いている人は少ないんじゃないでしょうか?
せっかくお客さんがリピートする気になって、回数券も買おうと思っているのに、現金支払いしか対応できないがためにチャンスを逃してしまう、なんてもったいな過ぎますよね。
だから、回数券を販売するならクレジットカード決済の導入は必須です。
またクレジットカード決済だけでなく、PaypayやLINEpayなどのスマート決済も導入も高額支払いには有効なので、まだなら早めに導入を進めましょう。
では、クレジットカード決済やスマート決済を導入したからと言って、もう安心かというと、そうではありません。
それが「特定継続役務の提供」という法的な問題です。
これがあることで、高額な回数券の決済ができないというケースが起こりえます。
特定継続役務とは
「特定継続的役務」とは「特定商取引に関する法律(特商法)」の第41条第2項で、次のように定められています。
1|役務の提供を受ける者の身体の美化又は知識若しくは技能の向上その他のその者の心身又は身上に関する目的を実現させることをもって誘引が行われるもの
2|役務の性質上、前号に規定する目的が実現するかどうかが確実でないもの
はい。相変わらず法律の文章ってのは。ややこしいですね。
噛み砕くと、こうなります。
美容医療やエステなどのように顧客のカラダをキレイにすることを目的とするものや、パソコン教室や語学教室、学習塾のように知識の向上やスキルアップを目的とするものがこれにあたります。
また、これらの役務は、一定期間継続したからといって、確実に効果が出るものではありません。
エステに通う人がみんなもちもちツルスベ肌になるわけじゃないし、英会話教室に通ったからといって確実に英語がペラペラ話せるようにはならないですよね。
提供しているサービスがこの2つの条件にあてはまると、特定継続役務を提供している業種に分類されます。
特定継続役務の対象業種
このように、提供しているサービスが上記の2つの条件に当てはまる7つの業種が、「特定継続的役務」に指定されています。
該当する業種はつぎの7つ。
エステティック
美容医療
語学教育
学習塾等
家庭教師等
パソコン教室等
結婚情報提供
これらの業種のサービスがすべて特定継続役務になるかと言うと、そうではありません。
特定継続的役務の提供とみなされるのは、上記の7つの業種ごとに提供する期間(1ヶ月もしくは2ヶ月を超える)と金額(5万円以上)を超えるものと決められています。
上記の業種のうち、このブログを読んでくれている人に関係がありそうなのは「エステティック」と「美容医療」あたりだと思います。
この2つの業種については提供期間は1ヶ月と決められています。
この2つの業種についてまとめると、1ヶ月以上の期間にわたって継続的にサービス(役務)を提供し、その金額が5万円以上なら特定継続役務にあてはまる、ということです。
エステティックの定義
ここまで読んで、

と思われたかも知れません。
確かに整体やカイロ、リラク、ストレッチなどなどのサービスは、施術をする側も受ける側も、エステティック」じゃないと考える人のほうが大多数だと思います。
僕もそう思います。
でも、総務省が2002年に定めた「日本標準産業分類」では、エステティックは次のように定義されています。
「手技又は化粧品・機器等を用いて、人の皮膚を美化し、体型を整える等の指導又は施術を行う事業所をいう。」
また、特定商取引法では、このように定義されています。
「人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと。」
ん~、曖昧。びみょ~。
この条項に従うなら、整体やカイロプラクティック、ストレッチなどであっても、手技や機械を使ってカラダの歪みや姿勢の崩れを整えたり、アライメント調整などをしているなら、広義のエステティックと捉えられるケースがあります。
ということは、整体院で11回10万円の回数券を販売している場合、特定継続役務だと判断される可能性が、めちゃくちゃ高い、ということです。
だけど、本当の問題は特定継続役務とみなさされることではなくて、クレジットカード決済(スマート決済も)が承認されないということです。
では、なぜ特定継続役務だとクレジットカード決済が通りにくくなるのでしょうか?
なぜ特定継続役務はクレジット審査に通りにくいのか
サロンや整体院で回数券を販売するということは、ある一定期間、続けてサービス(施術)を受けるということを意味します。
1回で終わるなら、回数券とは言わないですしね。
ある一定の期間、継続して施術を受けるサービスは、1回の施術を受けただけで、すぐに最終的に求められている効果をえられるかどうか、判断できるものではありませんよね。
だからこそリピートの必要性があるんですが、実際に一定期間、継続してサービスを受けることで、本当に期待している効果があるのかどうかや自分に合っているかを判断することができます。
以前は、このようなサービスで


といったトラブルが多発していました。
こういった問題が多発したことを受け、「特定継続的役務」に該当するなら販売方法や理由にかかわらず、中途解約やクーリングオフができるように、2009年に特定商取引法が改正されました。
だけどクレジット会社にしてみると、中途解約やクーリングオフがユーザーの意思で自由にできるようになるということは、不払いや未回収のリスクが大きくなるということ。
そのリスクを避けるため、クレジットカード会社は特定継続的役務に対する審査を厳しくしているのです。
そして、SquareやPaypayなどの決済仲介サービスも、無用のトラブルを避けるため、またユーザー保護のために、特定継続役務での5万円以上の販売を禁止しているのです。
SquareもPaypayも利用規約に特定継続役務での決済利用は禁止と明記されています。
これが『5万円以上の回数券はクレジットカード支払いNG』の背景です。
特定商取引法の条項などの詳しいことは、こちらをご参考に。
特定継続役務を提供する場合、事業者側はクーリングオフなどに対応する必要があり、またそれに準じた契約書などを準備する必要があります。
無料で使えるテンプレートもあるので、5万円以上の回数券を販売するなら、予防線を張るためにも予め作っておきましょう。
5万円以上の回数券を販売できないのか
では、5万円以上の回数券は諦めるしかないのかと言うと、そうでもありません。
僕の経営していた整体院では、主にSquareを使っていました。
販売していた回数券は、4万5000円、9万9000円、13万6000円の3種類、さらに26万円と48万円の体幹トレーニングのコースを販売していましたが、SquareでNGになったことはありません。
しかも、商品登録はせずに決済の都度、金額を手入力していました。
商品登録をしなかった理由は、Squareがリリースされた当初は管理画面がめちゃくちゃ使いにくかったからです。
で、特に問題もないので、そのままずっと商品登録せずに使っていました。
かと思えば、楽天ペイで6万円の回数券を決済したら、警告や確認のメールもなく、一発アウトでアカウントを削除されました。
なぜSquareはOKで、楽天はダメだったのか?
正直いって分かりません。
参考にならないですね。すみません。
どうすれば5万円以上の回数券を販売できるのか
それでも、考えられる回避法はあります。
特定継続役務のポイントは、5万円以上かつ1ヶ月以上継続することです。
なので、「1ヶ月チケット」などの名前で商品の登録をすることで、審査をスルーできる可能性があります。
お客さんには誤解されないように、商品登録の条件があるからこんな名前にしてるけど、1ヶ月過ぎても使えますよ、とちゃんと説明しておきましょう。
とは言うものの、この方法でも確実に審査が通るかどうかはわかりません。
僕のクライアントさんでも、僕と同じように都度払いで7万円の回数券を売り続けている人もいるし、「1ヶ月券」で対処している人もいます。
一方、「1ヶ月券」で数回決済したら、確認と警告のメールが送られてきたので、怖くて使っていない、というケースもあります。
ホントに対応がまちまちです。
ここからは僕の推測ですが、5万円以上をすべて審査のチェックで機械的に弾いているのではなく、業種×金額のフィルターでチェックをしたあと、最終的には人でチェックしているんじゃないかと思います。
そして、その担当者の判断次第で、審査OKもあればNGもあるんじゃないかと考えています。
じゃないと、審査の対応に差があることの説明がつかないですからね。
でも、今後、審査の品質統一が進んだり、AI化が進むと抜け道的な使い方はできなくなります。
なので、別の打ち手も考えておく必要があります。
複数回に分けて決済する
それは決済を5万円未満で、複数回に分けて決済する方法です。
例えば、7万円の回数券を販売する場合、4万円と3万円の商品を登録しておいて、クレジットカード決済を行います。
このときに注意が必要なのは、同じ商品を2回、3回とクレジットカード決済しないこと。
同じ商品を複数回続けて決済処理をすると、重複決済の可能性ありとして確認が入る可能性があります。
なので、例に出した7万円の回数券の場合、4万円と3万円になるのです。
これならば、金額的に5万円のNGラインに抵触しないので、審査に引っかかることがありません(あくまでも、いまのところですが・・・)
てことで、最後の手段をご紹介します。
PAYPALを使う
PAYPALはネットを介した個人間決済システムの老舗です。
もともとはアメリカのネットオークションサイト「Ebay」の利用者間での送金システムとして開発されました。
管理画面などのユーザーインターフェースがいまいちなのが残念ですが(それでもここ数年でかなり良くなったんですよ)、対応できる支払いや請求の種類、柔軟性は、さすがは最古参のサービスだと思わせてくれます。
しかも、クレジットカードだけじゃなく、銀行口座からの引き落としも使えます。
3大メガバンクに加え、ゆうちょとりそなも使えるので、クレジットカードを持っていない人や、使いたくない人でも対応することができる、かなり強力な決済ツールです。
主に物販などのECサイトやコンテンツ販売のような、いわゆるインターネットビジネスで広く使われています。
僕も教材やセミナーなどの決済は主にペイパルを利用しています、
実はPayPalも数年前に「PAYPAL Hear(ペイパルヒア)」という、Squareと同じような対面でのクレジットカードを使ったスワイプ決済のサービスに参入しましたが、1~2年で撤退しました。
なので、今はインターネット越しの決済というのが、前提条件のようになっています。
「ペイパルヒア」のサービスが終了したので、Squareのようなクレジットカードリーダーを使ったスワイプ決済はできませんが、使い方を工夫すれば、対面でもクレジットカード決済で回数券を販売することができます。
PAYPALを使って対面でクレジットカード決済する方法
ペイパルで売上を受け取るには、ビジネスアカウントの解説が必要です。
ビジネスアカウントを持っていない場合は、まずアカウント作成をしてください。
ビジネスアカウントの開設手順は、こちらのサイトが詳しいので参考にしてください。
PayPalを使って、対面で回数券販売をする方法について、解説します。
最初は大変に思うかもしれませんが、ステップ4までは一度作ってしまえばそれで完了なので、
慣れてしまえば簡単です。
①ボタンを作成する
paypalにログインしたら、ツール>すべてのツール>決済ボタン へと進みます。
画面が切り替わったら、関連項目の中にある<新しいボタンを作成>をクリック。
次に表示されるPayPalの支払いボタンを作成する画面で、金額などの設定をします。
②決済ページのURLをコピーする
ボタンが作成できると、2種類のコードが生成されます。
1つはサイトなどに埋め込むHTMLです。これは今は使わないので無視。
もう1つはペイパルの決済ページに直接リンクするURLです。必要なのはこちらなので<メールアドレス>のタブをクリックし、表示されたURLをコピーします。
③QRコードを作成する
コピーしたURLを元に、QRコードを作成します。
QRコードは無料で作成できるウェブサービスが、たくさんあるので好きなのをおつかいください。特にこだわりが無いなら、QRのススメが画面もわかりやすくてオススメです。
QRコード作成ツールに、先ほどコピーしたURLをペーストしてQRコードを作ります。
QRコードができあがったら、ダウンロードしましょう。
④メニュー表などに貼り付ける
ダウンロードしたQRコードをメニュー表や、リピートや回数券の説明をするときに使うツールに貼り付けます。
貼り付けて印刷したら、スマホでQRコードを読みとって、ちゃんと決済ページにリンクするかどうかを確認しておきましょう。
⑤QRコードを読み込んで決済してもらう
QRコードを読み込んで決済ページが表示されたあと、クレジットカードの情報を入力してもらう必要はありますが、この方法を使えばスワイプをせずに、対面でクレジットカード決済することができます。
クレジットカードをカードリーダーでスワイプして決済するのに比べると手間はかかりますが、回数券販売のチャンスを逃すことを思えば、大したことないですよね。
それに、スマホを使ったQR決済が一般化したことで、QRコードをスマホで読み取って決済するというフローも、お客さんにとって珍しいものではなくなってきています。
なので、大きな違和感もなく、決済の手続きを進めてもらえるでしょう。
前にも書きましたが、ペイパルはインターネットを通じた決済が前提なので、特定継続役務への審査は甘いようです。
一応、ビジネスアカウントを作成するときは、業種も登録するので役務を提供しているというのは分かっているはずなんですけどね。
まとめ
サロンや整体院、整体院で回数券を販売する場合、利用期間が1ヶ月以上&5万円以上という条件にあてはまると、特定継続役務の提供に当てはまります。
このこと自体はなんら問題ではなく、特定継続役務にあてはまるサービスは、ユーザーの意思でクーリングオフできるという法律があります。
クレジットカード会社は途中解約やクーリングオフなどで、未払いなどが起きるリスクを回避するため、特定継続役務への審査を厳しくしています。
それが『5万円以上の回数券はクレジットカード支払いNG』という制約を生んでいる原因です。
この制約をすり抜けて、5万円以上の回数券を販売するためには
・1ヶ月以内という条件をつけた商品を登録し、販売する
*実際の利用は1ヶ月以上になってもOK
・5万円以下の商品を複数登録して、2回以上に分けて決済する
この時、同じ商品を繰り返し決済しないようにする
・ペイパルを使ってQRコード経由で、インターネット決済をする
サロンや整体院においては、売上を増やしすためにも、キャッシュフローを良くするためにも、リピート率を挙げるためにも、LTVを高めるためにも、回数券の導入はとても有効な手段です。
でも、高額な回数券を販売するためには、クレジットカード決済の導入は避けて通れません。
この記事を参考にして、あなたも5万円以上の回数券を導入してください。