テクニック№03 定額料金

1990年代後半、ネットや携帯電話の黎明期。サービスを提供している企業のほぼすべてが、新規利用者が増えず、新規契約した利用者も定着しないこと=売上げが増えないという悩みを抱えていました。
インターネットが一般的に普及し始めた頃。ネット接続に必要なプロバイダー料金は、通信したデータ量に応じて料金が決まる従量制が一般的でした。また、今やライフラインの1つとして定着した携帯電話も、同じように2000年代初頭までは、基本料金+利用した電話通信料という従量制が当たり前でした。
でも、こうした料金体系であるがために、多くの人が興味を持っているものの、使えば使うほど支払うお金も増えていく=苦痛の種が増えていくのが簡単に想像がついてしまう。だからインターネットや携帯電話を始めることに二の足を踏んでいたのです。
ちなみに、僕は大学2年生から携帯電話を使い始めました。当時の携帯電話の電話料金は1分100円ぐらい。なので、おいそれと長電話なんてできないし、ホントに大事な用事があるときにしか使えない。携帯電話を持っているのに、公衆電話を使うためのテレホンカードも常備しているのが常識でした。
でも、2002年に大きな転機がやってきます。
それはアメリカ最大のインターネットプロバイダーAOLが、使った通信量で料金が決まる従量制ではなく、通信量に関係なく使い放題の定額制を導入したことです。これでAOLの利用者は爆発的に増加し、当然のことながら他の企業も追随していきました。
その結果、いまはどうなったでしょう?
ほぼすべてのネットプロバイダーや携帯キャリアが、定額制を採用していますよね。もしかしたら、平成生まれの人からするとインターネットや携帯料金が従量制だったなんて、信じられないかもしれないですね。
なんて、古き良き(?)時代の話はさておいて、ここからが本題です。
なぜ、定額制にすることで利用者が増えたのか?
もう、言わなくても分かっていると思いますが、従量制だと利用するたびに何度も何度も苦痛がやってきます。そうなるとネットを見たくても料金が気になるから使うのを渋るようになってしまう。そして最終的にはネットを使わなくなって契約解除に至る。また、ネットしてみたいなぁ、と思っている人も、何度も苦痛が襲いかかってくるのが目に見えているので、プロバイダー契約に踏み切れない。
だけど定額制だと、苦痛がやってくるのは月額契約だと月に1回。しかも料金が決まっているので苦痛の量も分かっている。だから、利用者が一気に増えたんですね。
こういった定額制でサービスを提供する形態のことを、最近では「サブスクリプション」と読んでいます。かつて隆盛を極めたレンタルビデオ店が今や絶滅危惧状態にあるのは、お店に借りに行かなくてもネットで観られるようになった、というのも大きな理由です。
だけど最大の理由はネットフリックスやアマゾンプライムなど、定額制(サブスクリプション)で見放題のサービスが充実してきたから。
そして、定額制で苦痛の回数を減らすことで、利用者を増やし、定着率を高めることができるのはサロンや整体院も同じこと。
サブスクリプション=定期的に支払いを受け取る方法も、クレジットカードの導入と同じく、かつてと比べると格段に簡単に導入できるようになりました。いま(2022年時点)なら、Paypal(ペイパル)やStripe(ストライプ)などのサービスを利用して、簡単に毎月自動引き落としができるようになります。
詳しくは「整体院でリピート獲得のための回数券導入で失敗しないために知っておくべきこと」で解説しているので、サブスクに興味があるなら読んで下さいな。
テクニック№04 キリのいい数字にしない

あなたが提供しているサービスや施術の価格はいくらですか?もし、末尾が「000円」や「500円」になっているのなら、いますぐ見直すことを強力におすすめします。
イチキュッパ、ヨンキュッパ、キューキュッパというように価格をキリのいい数字にするのではなく、198、000円、4,980円、998円といったいわば中途半端な数字にするのは、見込み客の購買意欲を刺激する基本的なテクニック。
200,000円よりも198,000円が、5,000円よりも4,980円が、1,000円よりも998円がお得に感じるし、支払総額に対して小さな金額だけど実際にお得です。その効果のほどは、世界中にあふれるイチキュッパ、ヨンキュッパ、キューキュッパが証明してくれていますよね。
なぜ、イチキュッパ、ヨンキュッパが効果的なのか?
それは、人がお得感(実際にお得かどうかは別)に弱い生き物だから。
だから、お得感を刺激して購買意欲を高めるために、キリのいい数字からほんのちょっとだけ下げた価格にするのは、控えめに言ってもめちゃくちゃ強力で効果的、かつ簡単なテクニックなんです。
だけど、いまさらこんな基本的なことを言われても
ですよね。
だったら、これはどうでしょう?
ある施術メニューを金額を8,000円にした場合と、8,143円にした場合、どちらが購買意欲を刺激する、つまりは集客効果があると思いますか?
質問している時点で答えをバラしているようなもんですが、なんと驚いたことに8,143円の方が効果が高いんです。
だけど、値段が高いのにどうしてなんでしょう?不思議ですよね。
この現象を証明する実験がフロリダ大学で行われました。
フロリダ大学でマーケティングを教えているクリス・ヤニシェビスキー教授は、商品の価格設定に人がどう反応するかのテストをしました。3つのグループに分けられた被験者群には、次の3種類の価格を提示しました。
Aグループ:4,988ドル
Bグループ:5,000ドル
Cグループ:5,012ドル
この3つの数字は、支払総額に対して数パーセントの差しかないので、実際にはほとんど変わらないといえます。そして、実験ではこの価格を提示したあと、被験者には商品の仕入れ値がいくらだと思うか?と質問しました。
すると、AとCのグループは提示された価格よりも仕入れ値の方が高いと答えました。つまりお得だと感じた訳です。その理由として、Aグループの人たちは、仕入れ値は提示された額(4,988ドル)よりも高いけど値引きをしてくれていると回答しました。これは順当でわかりやすいですよね。
ではCグループは、どんな理由でしょうか?
それは、材料費や技術料、その以外の何かしらの正当な必要性があって、キリのいい数字には収まらず中途半端な金額(5,012ドル)になっているんだろう、という回答でした。その上でギリギリの価格を設定してくれているからお得だ、と感じたというのです。
そして、残るBグループは5,000ドルよりも仕入れ値は安いと答えました。また、安いだけでなく、仕入れ値もキリのいい数字を予測していました。つまり、適当な利益が上乗せされた金額だと考えたのです。もちろん、お得感は感じていません。
さてさて。この実験から提示する金額を工夫することが、見込み客の購買意欲を刺激して、集客と売上げを増やすために効果的なことが分かります。
まず1つめは、さっきも書いたとおり、1,980円、39,880円のようにキリのいい数字から、ほんの少し割り引いた価格にすること。
次に2つめは、1つめとは逆にキリのいい数字よりも、少し増やした価格にすること。
そして最後の3つめ。キリのいい数字は避けるということ。
もし、あなたの提供しているサービスの金額がキリのいい数字なら、ほんの少し割り引くか上乗せしてください。
当たり前ですが、おすすめは上乗せです。だって、その方がほんのちょっととは言え売上げが増えますからね。数パーセントとは言え、価格を変えるだけで売上げが増えるなら、やらない手はないですよね。
そんなん、言われんでも知ってるわ!!